野菜

芳賀町

石下 尚美さん

野菜農家

農業を経営的視点で
発展させる

農家に経営感覚を取り入れる

ごく普通のサラリーマン家庭に育った私には、100年以上も続く農家に入ることは、想像以上に大変なことでした。仕事をしても給料をもらえず、家事や子育てはワンオペ…。そんな農家の暮らしに馴染めませんでした。

そこで、私は前から興味のあった店を始めることに。友人の飲食店を休日に借りてスポット飲食店をやった経験もあり、道の駅に空き店舗が出たことをきっかけに、2012 年から総菜店の経営に挑戦し、収穫した農産物を原料とした6 次産業化に取り組みました。その後、家業の農業を変えてみようと本格的に生産部門にも携わることを決意。「1 年間で売り上げを 100 万円アップさせる!」と家族に宣言しました。自分の存在意義を認めてもらうには、実績を出さなければなりません。

手始めに明細書や領収書をファイリングして、お金の流れを把握することから始めました。さらに少しずつ農協以外の販路を開拓。スーパーや飲食店に卸すことで売り上げがアップしました。経理を任され、宣言した目標額も楽々クリアし、その先に駒を進めました。

たくさんの人の助けが支えに

定期的にミーティングや掃除を実行する

現在は米が約 20ha、麦、大豆、そば、デントコーンのほかに、露地野菜 30 ~ 50a、アスパラガス 15a、メロン 3.5a の規模を展開する農家です。そして、種苗メーカーで 5 年間働いていた三男が昨年から就農し、本人の希望で始めたメロンは今年から収穫しています。 規模の拡大とともに、正社員 1 名、パート1 名を雇用し計 5 名を軸に作業を行っています。また農繁期にはパートの方だけでなく、2つの福祉施設から農業支援に来てもらっています。

そこで一緒に働く以上、将来のビジョンや方向性の共有は欠かせないことから、ホワイトボードを利用して作業を明確にするほか、毎朝の申し送りを定例化しました。週一回はミーティング。さらに毎月大掃除の日も決めて環境の美化に努めています。こうした家族の取組もあって、全員の農業経営への意識が少しずつ変わっていきました。

手探りでスタートした福祉施設との連携は、今では必要不可欠なものに

農福連携マッチングを活用することで、圃場をしっかり管理する

3 年前は両親と夫が米、麦、そば、私がほぼ 1 人でアスパラガスと季節野菜を作っており、除草や片づけまで手が回らず、作業に追われる状況になりました。そこで見つけたのが、とちぎセルプセンターを通した、県の「農福連携マッチング」でした。とはいえ、障がい者の方にどんなふうに作業をお願いするのかもわからなかったので、すでに利用されている先輩農家さんを見学しました。

そしてお願いする福祉施設の職員さんに、現場にきてもらい、お互いのことをよく理解したうえで作業委託契約を結びました。作業はこちらが直接、障がい者さんにお願いするのではなく、職員さんに伝えて指導してもらいます。基本的には除草と片づけ作業ですが、実際にやってみたら、負担になってしまうことや、限られた作業時間では難しいことも。職員さんにお任せではなく、実際に障がい者さんが作業している様子を確認しながら、無理のない工程で気持ちよく、長く働いてもらうにはどうしたらいいのか、試行錯誤しています。日程の調整や作業内容など、こちらの希望を押し付けることなく、相手側に寄り添うことが大切だと思います。

農福連携を利用したことで、圃場がいつもきれいで管理しやすくなりました。私たちの作業効率が上がり、新たな目標へと向かう余裕もできました。今では石下農園の農業経営に福祉施設の方の力がなくてはならないものになっています。

息子さんも就農。農業経営のビジョンを語ってくださいました

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